洗浄技術について


洗浄技術の化学的な観点から重要な点は『界面活性剤』,一般的な汚れとしての『油脂』,および洗浄の溶媒となる『水』である。

その三者を具体的に示してみると次のようになる。
洗濯中の洗濯機の中を考えると、水と空気の界面、水と汚れの界面、水と衣類の界面、汚れと衣類の界面、洗濯槽と水の界面、 のように、たくさんの界面が存在してる。


これらの表面において汚れである油と水は交じり合わず、反発し合っている。つまり、水/油界面においては相互力が働かないためにいくら洗濯槽を回したところで油はくっついた布との界面からおちようとはしない。そこで、界面活性剤(いわゆる合成洗剤や石鹸)をくわえるとそのよごれというのは水中に広がってよくおちる。この原因というのは界面活性剤の分子の構造に起因する。


界面活性剤の分子を簡単に示すと一般的に親水性基を持つ油脂(疎水基)ということができる。そして親水基は水とドッキング、疎水基が油とドッキングすることで両者を結びつける働きをする。

(水分子)-----(親水基)界面活性剤(疎水基)----(油)---(布,食器)

そして、洗濯で言えば、水流によって最外面の水分子を引っ張ることで界面活性剤を介して(油)を引っ張り、布,食器からひっぺがすのである。

このとき、開発の段階でかんがえなくてはいけないことは油と布や食器などの界面の親和力よりも界面活性剤との親和性がつよくなくてはいけないことである。そうしなければ汚れは落ちない。特に食器用の洗剤などでは界面活性剤と油との親和にかかる時間も重要になってくる。食器を洗うのにかかる時間というのはお皿なら1枚2〜3秒ではないだろうか?十分に界面活性剤と油が結びつかなければ汚れの落ちは格段と下がる。最近ジョイのCMでお皿に水をのせ、その上に油をのせて、1滴たらすと油がはじかれるCMがある。これくらいの能力は必要なのだろうが、そのことを考えてみると実はなかなかに「おぉー」ってなるものです。また、このCM関連で抑えておかなければいけない重要な点を考えておきましょう。

それは、油が界面活性剤をもちいて、食器から水中にはなされた後にどうなるかです。
洗浄をしている際、水中には無数の界面活性剤が存在しています。水中に漂う界面活性剤は先ほど述べたように疎水性基をもっていますね。通常これは炭素がながーくつながった構造をしているのですが。それをくちゅくちゅって小さくまとめて居場所ないよーってなってます。なぜなら、水との相性が悪いからです。そこに、先ほど離れた油が水にでると運命の人だーって感じで続々と集まっていっちゃうのです。しかも無数の界面活性剤に取り囲まれてしまうのです。つまり、油を球状にして親水性基を水側にむけてくれるのですね。こうして、油は水中に溶け出すのです。

さらに、この取り囲まれることにもうひとつ重要なことがあるのです。構造的に油を水の膜が囲む構造になるためにさらに布などにくっついて汚れることがなくなるのです。あんぱんを考えましょう。あんこが油、パンが水。あんこを顔に押し付けたらえらいことになります。しかし、アンパンを顔に押し付ける分にはそれほど問題はありませんね。

まとめます。
布や食器についた油分を界面活性剤をもちいてはがす。その後、無数の界面活性剤に取り囲まれてあたかも水の膜にコーティングされたようになり、あらたに食器や布を汚すことはありません。


なお、ここで紹介した界面活性剤には数種類に分類することができますが、詳しくは、界面活性剤の入門書などで確認しましょう。

(参考文献およびURL)

『石鹸百科』
http://www.live-science.com/honkan/theory/index.html

界面活性剤などの理論的な部分から説明されていてとてもわかりやすい。

花王化学品の「花王けみかるプラザ」界面活性剤の基礎知識』
http://chemical.kao.co.jp/ChemicalForum/ChemicalPlaza/surfactants_1/Default.htm

界面エネルギーの減少による油分の水中での球状になる説明などを具体例をあげて説明している。開発時に使用温度を考える際に重要なクラフト点,使用される水のpHを考慮した曇点、単分子膜であるベシクルなどの技術上重要なこともまとまっている。